登山に関するケルト諸語豆知識

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ケルト語派とは?

印欧(インド・ヨーロッパ)語族の言語の一派。以下のような言語(全部は 挙げていません)がケルト語派に分類されます(以下、「/」がある場合は、 「日本語表記/英語表記/当該言語表記」の意とします)。

  • ケルト語派 / Celtic
    • 島嶼ケルト語 / Insular Celtic
    • 大陸ケルト語 / Continental Celtic

コーンウォール語 (Cornish / Kernewek)

概説

コーンウォール (Cornwall)は、英国最南西に位置し、西方に細長く伸びる半島です。 ローマ人の侵略を免れた数少ないイングランドの地で、加えて アングロ・サクソン人のブリテン島への侵略時に土地のケルト人が 追いやられた地でもあるため、独自の文化、そして独自の言葉の コーンウォール語(英語なら Cornish; コーンウォール語自体では Kernewek, Kernowek, Curnoack などと綴られる)を持ちます。

こういう歴史的理由で、コーンウォール語は、ケルト語派に属し、 言語学的には、その中で、島嶼ケルト語の中のブリトニック語(Pケルト語という 分類もある)の中の一つと分類されているそうです (上の「ケルト語派とは?」に分類一覧)。 ブリトニック語は、他に、ブルトン語(ブルターニュ語)(英国の対岸に 位置するフランスのブルターニュ地方の言語)やウェールズ語があり、 コーンウォール語は、これらの言語に類似しています。実際、7〜8割の 基本語彙は共通だそうです。一方、スコットランド・ゲール語やアイルランド語も 同じ島嶼ケルト語なので、35% ほどの語彙は共通だとか。 一方、英語とは大きく異なります(同じ印欧語族ですけどね)。

ただし、コーンウォールが中世にイングランドに征服されたこともあり、 コーンウォール語の話者の数は徐々に減少し、18世紀には言語的に絶滅した、 とされます(英語版 wikipedia の図がその進展の様子をよく表しています)。 中でも、最後のコーンウォールの母国語話者とされる Dolly Pentreath の今わの際の 言葉は、Me ne vidn cewsel Sawznek! (英語は喋りたくない!) と 伝えられます。

その後、コーンウォール語復興運動が起こり、現在では話者の数 約3500人、うち 300人がぺらぺら(2000年の調査)とされています。 当然、全員が英語もぺらぺら(のはず)。 コーンウォールの地名の一部には、英語名とは別にコーンウォール語名が あります。

登山に使われるコーンウォール語

さて、登山者にとって、(少なくとも)ひとつ重要なコーンウォール語があります。
 zawn
です。海岸沿いで、急な崖にはさまれた小さな海峡のような場所を指します。
 http://www.ukclimbing.com/articles/page.php?id=33
の一番下の方に zawn の写真があるので、それで感じが掴めるでしょうか。 これは、ガイド本にしばしば登場する単語で、時に地名にも含まれます。 また、ウェールズでもしばしば使われるので、ウェールズ語でもあるのでしょう。 一方、ジーニアス大英和にもリーダーズ英和にも Collins (英英)にも 載ってなかったので、 英語とはみなされていないのだと思います(英国人でもよほどアウトドアに 熱心な人でないと知らない単語です — 英語ではないのだから)。 というわけで、zawn、コーンウォール(やウェールズの海岸)に 登山やウォーキングに行くなら 覚えておきたい単語です — ついでに、コーンウォール語を喋った 気になれるし? (笑)。


参考リンク

wikipedia


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この文書について

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http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/lang/celtic.html


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