湖水地方@イングランドの山情報

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湖水地方概観

湖水地方(Lake District)と言えば、ピーターラビットの里、アーサー・ ランサムの(「つばめ号とアマゾン号」などの)舞台。ワーズワースの地。 名の通り多くの湖を抱えたイングランドで最高の景勝地であり、観光地 です。ただ……、イングランドの例にもれず、森らしい森は少なく、 実質上、多くの場所は牧場になっています。

湖水地方南部の入口は Kendal(ケンダル)です。マロリーがエベレスト 登山に持参したというケンダル・ミントケーキ(砂糖菓子の一種)で有名な地 です。列車の終点が、イングランド最大の湖、Windermere(ウィンダミ ア)湖の中央部ほとりの Windermere にあります。この Windermere の 隣の Bowness-on-Windermere が、Kendal を除けば、規模的には湖水 地方最大の観光街でしょうか。Windermere湖北端に位置する町 Ambleside (アンブルサイド)が、湖水地方最大の登山基地です。 Ambleside へはイングランド各都市から長距離バスも出ています。 Ambleside から北に行った Derwent Water湖北端の Keswick(ケジック)が、もうひとつの登山基地になります。 そしてケジックの東方にある Penrith (ペンリス)が、湖水地方北部の入口の街と 言えましょう。

以下、「登山という観点から」、Ambleside を起点にして時計回りに 湖水地方を大雑把に分類してみます。湖水地方の山々には決定的な 分類法があるわけではなく、ガイド本によってもそれぞれ異なるのが 実情です。ですので、以下は、目安と思ってください。 ここで一点、面白いのは、湖水地方の地域の分類は、「山脈」ではなく、 「谷 (dale(デイル))」で分類されることが多いことです。 「湖水」地方として、湖(人々の居住する平地でもありますね)を起点に考えるなら、 湖は谷部に存在するから、そう思えば理解はできますが。 一方、山々は、当然、二つの谷に挟まれることが多いので、 登山の観点での分類としては、あまり都合がいい話ではありません……。

Ambleside 南西(Windermere湖西側)に Coniston(コニストン)、 その西に Dudden Vally (または Dunnerdale; ダドン谷)、 Ambleside 西に Langdale、そのさらに南西に東西に拡がるのが Eskdale。 ワズデイル (Wasdale(Scafell山系)) がそこから 北に延びます。その北方で東西に延びるのがエナデイル (Ennerdale)、その北に Buttermere、その東方、南北に大きく拡がるのが Borrowdale、その北の Keswick村のさらに北 側の Skiddaw山系、Keswick 南東(Ambleside の北側、Buttermere の ずっと東側)の Helvellyn山系、 最後、Ambleside 東側には比較的マイナーな Kentmere があります。

これらすべて(?)をひっくるめて、カンブリアン山脈(Cumbrian Mountains) と呼びます。カンブリアン山脈には盟主 Scafell Pike (スコーフェル・パイク; イングランド最高峰: 978m) をはじめ、 3000ft (=915m) を超える山が五峰あり、多くの 2000ft(=約600m以上) 峰があります。イングランドでは、屋根と言っていい山系なのです! 特筆すべきは Wasdale 地域にある Napes Needle (ネイプス・ニードル) で、英国のロッククライミング発祥の地として有名です。湖水地方は、 誇り高い英国の登山家たちの心の故郷かも知れません。

湖水地方の歩登攀

歩登攀とは、scrambling の訳語です(と 僕が提案しているものですが)。 手も使って「よじ登る」ことを「scramble」(動詞)と言います。但し、 本格的な登攀(climbing)ほどには厳しくない場合を指します。 日本なら鎖場や梯子場があったりして、ちょっとした高度感が楽しめるような場所 が歩登攀に相当するでしょう。英国の場合は、鎖や梯子はほぼ皆無ですが。 あるいは易しい沢登りも、ある意味で歩登攀と言えるでしょう。

歩登攀は、英国では比較的最近注目を集めるようになった山登りの形態の ようです。既存の丘歩き(hill walking)には飽き足らなくなって、でも 本格的な登攀はちょっと、という人、あるいは逆に岩登りが好きだけど 奥深い山の雰囲気を気軽に(たとえばちょっと(天候などの)条件がよくない時など) 楽しんでみたい、という人に受けているように見受けられます。

歩登攀は、大きく分けると、以下の 3種類に分類されそうです。もちろん、ルートに よっては、一つのルートの中に 3種類全部の要素が含まれていることもある でしょうが。

  • 普通のフェース(壁) — 普通に言う急登
  • 稜線縦走
  • 川沿い (Gill scrambling/climbing) — 沢登りに近いが、敢えて水に入ったり、まして泳いだりはしない。

湖水地方には、もちろんたくさんの歩登攀のルートがあります。 僕の印象では、次の 5つが最も有名です (なお、以下で「退却不能」として いるのは、簡単に歩いて降りる/迂回するわけにはいかない、という意味です。 登攀用具があれば、ザイルを用いた懸垂下降は可能です)。

Jack's Rake (ジャックス・レイク)
場所: (Great) Langdale; Pavey Ark に突き上がる
種別: フェース
難易度: Grade 1 (一旦登り始めたら、退却不能)
コメント: おそらく最も有名。丘歩きの人にとっての最高難易度。 ひと目で分かる素晴らしいライン。湖水地方で最もポピュラーな山域なので、 眼下に大勢の人(ハイカー)を見ながら登ることになる。
個人記録文: 2004/05
Sharp Edge (シャープ・エッジ)
場所: Northern Fells; Blencathra に抜ける
種別: 稜線縦走
難易度: Grade 1 (難しい場所は簡単に迂回可能)
コメント: 非常にポピュラー。丘歩きの人にとっての最高難易度。
個人記録文: 2005/12, 2008/02(冬期)
Climber's Traverse (クライマーズ・トラバース)
場所: Wasdale; Napes Needle そば, Great Gable 側面で、山頂に抜ける
種別: 稜線縦走、フェース
難易度: Grade 2 (難しい場所の迂回は簡単ではない。特に核心は退却不能)
コメント: 有名な Napes Needle のまさに足元を通り抜ける(以下参照)。
個人記録文: 2006/02
Pinnacle Ridge (ピナクル・リッジ)
場所: Patterdale; Fairfield に抜ける
種別: フェース
難易度: Grade 3 (難しい場所は簡単に迂回可能)
コメント: 比較的静かな山域
個人記録文: 2006/08
Broad Stand (ブロード・スタンド)
場所: Wasdale; Scafell Pike と Sca Fell の稜線上、Sca Fell に抜ける
種別: フェース、稜線縦走
難易度: Grade 3 (Diff; 核心は 2.8m。あとは Grade 1 程度。退却可能)
コメント: 英国で記録に残る最初の歩登攀(scrambling)ルート (1805年の 8月5日; サミュエル・テイラー・コルリッジ (Samuel Taylor Coleridge) による; 出典: Wikipedia の「Sca Fell」)。
個人記録文: 2007/05

湖水地方関連リンク


地域

コニストン (Coniston)

コニストン(Coniston) は、登山基地アンブルサイド(Ambleside)村の南西 10km、 コニストン湖(Coniston Water) のほぼ北端西側に位置する小さな村です。 その西側に、 ジ・オールド・マン・オブ・コニストン(The Old Man of Coniston; または Coniston Old Man)山(803m) を盟主とする山群 ファーネス山地(Furness Fells) が広がります。 ジ・オールド・マン山の 北側はリトル・ラングデイル(Little Langdale)からエスクデイル(Eskdale)へ とつながる谷によってスコーフル山系と分かれ、西側は ダドン谷(Dudden Valley; または Dunnerdale)になります。

コニストン村の西側、ジ・オールド・マン山方面には、 銅鉱山が広がります。英国で最大級の銅鉱です。 その麓には、有名なコニストン・ カパーマインズ・ユースホステル (Coppermines youth hostel) があります。コニストンの村から、坂道を 1.5km ほど登ったところです (ダートながらよく整備された道を車でアクセス可能)。 それに隣接するように、山小屋もあります。 なお、コニストン村には、別のコニストン・ ホーリー・ハウ・ユースホステル (Holly How youth hostel) もあります。

ジ・オールド・マン山のすぐ西側に、有名な ダウ・クラッグ (Dow Crag) があります。コニストン村から歩いて約1時間のアクセスです。 Giant's Crawl (Diff) をはじめ、50メートルを超えるマルチピッチの有名なルートが目白押しです。

参考リンク

地図

ワズデイル (Wasdale)

Wastwater湖を含む 谷がワズデイル (Wasdale)。 イングランド最高峰の スコーフル・パイク (Scafell Pike) への登山口として名高い。山に囲まれた谷ゆえ、他にも、 スコーフル (Sca Fell)山、 グレート・ゲイブル (Great Gable)山、 ピラー (Pillar)山、 Kirk Fell山、 Yewbarrow山 など、数多くの山への登山口になっている。

アクセスはかなり面倒で、湖水地方の奥地と言える。 湖水地方の中心部(たとえば Windermere湖)方面からは、 Hardknott Pass を通るのが最短だが、急登、急下降、急カーブで有名で、特に冬は通るべきではない。 しかし、それ以外の道は全て大回りになってしまう。もしイングランド南部から のアクセスなら、多少の回り道にはなるが、(西海岸沿いの) A590〜A595 を 使った方がいいかも知れない。

ワズデイルには、湖近くにナショナル・トラスト(National Trust)の天場、 谷の一番奥(Wasdale Head)に、旅館(と付属の酒場/レストラン)、天場がある。 それ以外には数軒の農家が点在するのみ。Wasdale Head の天場の小さな売店では、 食料や土産ものの他、地図、ガイド本、登攀用具も売られている。

Wasdale Head 近くには、無料の駐車場もある。

参考リンク

地図

エナデイル (Ennerdale)

Ennerdale Water湖を含む 谷がエナデイル (Ennerdale)。 (東からのアクセスという意味で)湖水地方最奥地と言えるだろう。

奥の駐車場から林道(一般車両進入禁止) 2 km ほどで、 Low Gillerthwaite Field Centre (セミナーハウス、宿泊所)に着き、すぐ近くに Ennerdale - Gillerthwaite ユースホステルがある (2007年5月現在、改装工事のため閉鎖中)。 林道をさらに 6 km 遡ると、イングランドで最も人里離れたところにある ことで有名なユースホステル Black sail がある。 平坦に近い林道なので、マウンテンバイクならアクセスが比較的容易。

参考リンク

地図

ヘルヴェリン(Helvellyn)山系

西側のサールミア湖(Thirlmere)、東側にある 湖水地方(つまりはイングランド)で二番目に大きい湖のアルズウォーター(Ullswater)に 挟まれて、南北に延びる山脈がヘルベリン(Helvellyn)山系です。 その盟主が、湖水地方つまりはイングランドで三番目に高い ヘルベリン山(950m)です。

ヘルベリン山の東方のアルズウォーター湖から南に延びる谷が パタデイル(Patterdale)です。 ヘルベリン山系へのアクセスは、このパタデイルからが最も一般的でしょう。 逆に西側のサールミア湖側、あるいは(特に山系の南の方に行くならば) アンブルサイド(Ambleside)村 西北西の景勝地グラスミア(Grasmere)(湖)周辺からも登れます。 ただし、サールミア湖側から登る場合は、駐車する場所がごく 限られるので、要注意です。

東のパタデイル(谷)には目立った村がないためでしょう、 いわゆる観光客は少なく、比較的閑静な雰囲気があります。 その分、山人(とウォータースポーツの人)で賑わっている場所とも 言えます。

パタデイルの東方には、 ハイ・ストリート(High Street)山を初めとした遠東方山地の 相対的にマイナーな山々が南北に連なります。

参考リンク

地図

湖水地方の山々

ネイプス・ニードル(Napes Needle)

ネイプス・ニードル(Napes Needle)は、英国岩登りの発祥の地として非常に有名です。 英国のクライマーで知らない人はもぐりと言えそう。 ネイプス・ニードル自体は、グレート・ゲーブル(Great Gable)の側面にそびえる 18メートルのピナクル(柱状岩)。山の側面にあるため、グレート・ゲーブルを 臨むような遠くから見たのでは、実は全然目立ちません。近くに寄ると、垂直の 岩で、普通にはとても登れないのは一目で分かりますが。

1886年、 ウォルター・パリー・ハスケット-スミス(Walter Parry Haskett-Smith; 時に「英国岩登りの父」とも称される)が このネイプス・ニードルを 登ったことは、英国クライミングの金字塔として輝いています。 というのも、このクライミングこそ、「敢えて(山でなく)岩を登る」という 岩登りの伝統の始まりだと見なされているからです。 それ以前も「山を登る」人はいましたし(マッターホルンに 英国人エドワード・ウィンパーが初登頂したのは 1865年)、 ただ山頂に達するだけでなく、あえて難しい 岩壁から登る試みもすでに盛んではありました。しかし、山頂でない岩を登る というのは、英国内ではこのネイプス・ニードルが初めてでした。 つまり、ネイプス・ニードルは 英国近代岩登り(ロック・クライミング)発祥の地、と見なされているのです。

ネイプス・ニードルとグレート・ゲーブルとの山腹の間を抜けるのが 歩登攀のルート「Climber's traverse」で Grade 2 です。 ネイプス・ニードル自体は、最も簡単なルートで難易度 HS (Hard Severe) の クライミングです。かってはずっと易しかった(VDiff?)と聞きますが、 あまりにも有名になったため、大勢のクライマーが登った(登る)結果、 岩がつるつるになってきたんだとか。2ピッチで登るのが一般的です。 ピナクルなので降りるのが問題で、懸垂下降する手もありますが、 ガイド本によると、(第2ピッチの中間支点を残したままにして)リーダーは 途中までクライムダウンした方がいい、とありました。

ちなみに、ケジック(Keswick)村には、 この Napes Needle にちなんだに違いない、 Needle Sports という有名な登山用品店があります。小さくて見過ごしてしまいそうな店ですが……、 湖水地方(つまりは英国)屈指の登山用品店です。その ウェブページを見れば、 その一端が垣間見られるでしょうか。

(個人記録文: 2006/02)

スコーフル (Sca Fell)山

スコーフル (Sca Fell)山は、 標高 964m、イングランドで 2番目に高い山です (1番は、隣のスコーフル・パイク (Scafell Pike))。 Scafell とも綴られます。発音は、伝統的には、Scawfle つまり「スコーフル」 ですが、昨今は「スカフェル」と発音される方が普通でしょうか(湖水地方地元の 高名なクライマーもそう発音していました)。

スコーフル山とスコーフル・パイク山との間のコルが ミクルドール (Mickledore) と呼ばれます(標高 840m)。ただし、このミクルドールとスコーフルとの間に立つ ブロード・スタンド(Broad Stand)の垂壁が、 ごく短いながらも険しく、 山歩きの人を寄せつけません。歩登攀(scrambling)の Grade 3 とされます (もしくは、岩登りの Diff だそうですが……うーん、疑問)。ここを サミュエル・テイラー・コルリッジ(Samuel Taylor Coleridge)が 1805年の 8月5日に登ったのが、英国で記録に残る最初の歩登攀(scrambling)とされています (出典: Wikipedia の「Sca Fell」)。

山歩きで、スコーフル山頂から(おそらくはスコーフル・パイク山の方に行く ため)ミクルドールに達するには、Foxes Tarn池まで下る必要がある、 つまり、標高 680m辺りまで下って、登り返す必要があります。 逆側から Lord's Rake 経由という手も ありましたが……、2001年の大きな落石以降、このルートは岩が不安定で 危険とされています。

スコーフル山へ登る最短の道は、ワズデイル(Wasdale)のナショナル・トラストの 天場付近から登るものです。 あるいは、距離はずっと長くなりますが、 エスクデイル (Eskdale) から登ることもできます。もしくは、さらに距離が長くなりますが、 その反対側(北側)の ボロデイル (Borrowdale) からアクセスすることもできます。

(個人記録文: 2007/05)

ピラー (Pillar)山とピラー・ロックス (Pillar Rocks)

ピラー(Pillar)山は、 エナデイル (Ennerdale)の東(南)、 ワズデイル (Wasdale)の北に 位置する山で、隣接する山に Kirk Fell山、Yewbarrow山があります。 エナデイルワズデイル自体、 湖水地方の中では奥地に相当するので、ピラー山は湖水地方の中で 最奥地の山の一つと言っていいでしょう。 山頂(892m)には、三角柱が立っています。

ピラー山に登るのは、 ワズデイルの先端 (Wasdale Head)から出発して、Black Sail Pass を通って 登っていくのが最短でかつ単純です。 あるいは Mosedale Horseshoe (モウズデイル馬蹄形)一周とすることも できますし、南面には歩登攀ルートもあります。 一方、逆側の エナデイル(の駐車場)から 登るルートもあります。 また、Buttermere から出発して山を一つ越えた後、有名な ブラック・セイル(Black Sail)ユースホステル の横を通って Black Sail Pass に至ることもできます。

ピラー山のすぐ北側には、ピラー・ロックス(Pillar Rocks)と呼ばれる 岩峰(群)があります。顕著な二つのピークがハイ・マン(High Man)および ロウ・マン(Low Man)と呼ばれ、数々の岩登りのルートがあります。 ロウ・マン横の Shamrock にも多くの岩登りのルートがあります。 このうちハイ・マンは、イングランドで唯一、岩登り無しには 登れないとして知られます(の定義は、 Nuttallに依ります; Nuttall ではハイ・マンは Pillar Rock としてリストされています)。 一方、ロウ・マンや Shamrock からは歩いて降りられます。

ピラー・ロックスは、かっては湖水地方の岩登りの主要地の一つだったと聞きますが、 そもそも湖水地方の奥(=西部)に位置して、しかも アプローチの長さ(どうアプローチするかにもよるが、2時間前後; マウンテンバイク で林道をかっ飛ばせば、もっと速く着ける)が敬遠されるせいでしょう、今では クライマーを見かけることも限られ、静かな岩登りが楽しめることが ほぼ確実です。実際、僕が(2006〜2008年に)三回訪ねたなかで、いい季節だったにも 関わらず、クライマーを見かけたのはそのうち一回、1パーティーだけでした。

ハイ・マンは、岩登り無しには登れない、ということは、一旦登り切った 後の下降が億劫、ということでもあります。山頂から Jordan Gap に向けて 2ピッチの懸垂下降を行なうか(2ピッチ目は約 40m の下降)、易しいルートを クライムダウン(登り降りる)するかのいずれかになります。 最も易しいルートは Slab and Notch Climb と Old West Climb で、いずれも Moderate の難易度です。下降にも使われます。 特に後者は、1826年に John Atkinson によって登られたルートで、 イングランドで史上初めてのロック・クライミングとされています。 また、1913 年にジョージ・マロリー が初登した "Mallory's Route (North-West by West)" (現在 HVS 5a) は、当時、抜群に難しかったルートだして有名です (マロリーについての解説参照)。 一方、ハイ・マンで現在、一番人気のルートは、おそらく New West Climb でしょう。難易度 VDiff (または Diff) の 4ピッチのルートで、 この難易度としては湖水地方最高のルートともしばしば称されます。

(個人記録文: 2006/07, 2007/05, 2008/04 )

ピラー山関連リンク

ヘルヴェリン(Helvellyn)山

湖水地方の著名な山の一つに、 ケジック村の南東に位置する ヘルベリン(Helvellyn)(950m)があります。 実際、スコーフル・パイク (Scafell Pike)、 スコーフル (Sca Fell)に 次いで湖水地方で、つまりはイングランドで、最も高い山です。 西側のサールミア湖(Thirlmere)、東側にある 湖水地方(つまりはイングランド)で二番目に大きい湖のアルズウォーター(Ullswater)に 挟まれて、南北に延びる山脈の盟主がヘルベリン山です。

ヘルベリン山から南のフェアフィールド(Fairfield)山(873m)に、 あるいは北のクロー・ヘッド(Clough Head)山(726m)に至る縦走は、 湖水地方の丘歩きの中で人気あるルートの一つです。 また、ヘルベリン山への登頂としてストライディング・エッジ (Striding Edge)を通る馬蹄形ルートが、易しい歩登攀(難易度 1以下)で、 夏冬問わず大変人気のあるルートになっています。

一方、ヘルベリン山の北西壁は、湖水地方の冬期登攀の中で、 最も人気ある場所になっています。北向きで高度が高いため、 条件が整うことが最も多い(場所の一つ)で、またアプローチが 比較的短いからです。

(個人記録文: 2004/11 )

ヘルヴェリン山関連リンク


村々

ケジック(Keswick)村

ケジック(Keswick)村は、湖水地方では、アンブルサイド(Ambleside)に次ぐ 登山の拠点村。たくさんのアウトドア店も軒を並べます。中でも、 Needle Sports が クライマーに人気の店。 特に、Webページは 英国最高級の情報量と選りすぐりの品揃えを誇ります。 一方、この店、店構えは実はかなり小じんまりとしていてそう目立ちません。

ケジック村にある Dog & Gun というパブでは、Goulash (肉と野菜の煮込み料理)が 名物。ガーリック・トーストもついてきて、なかなかの量があって、 割と美味。


宿泊

「ブラック・セイル」ユースホステル

英国ユースホステル連盟のWebページ (http://www.yha.org.uk/find-accommodation/the-lake-district/hostels/Black-Sail/index.aspx) の紹介文は、 Black Sail is a legend, (ブラック・セイルは伝説(のホステル)だ) から始まります。 実際、ブラック・セイル(Black Sail)ユースホステルは、 英国内のユースホステルの中で、ある意味で抜群にすばらしい立地にあります (英国内の他の「人里離れた」ユースホステルのリストは、 http://www.yha.org.uk/inspire-me/wild-and-remote/wildandremote.aspx をどうぞ)。

ほとんどのユースホステルが、当然、車(少なくともタクシー)を横づけできる中、 このブラック・セイルだけは、そういうわけにはいきません(事前に予約確認取れば、 四駆 1台に限って許されるという噂も聞いたが、嘘かも?)。 ブラック・セイルの最寄りの駐車場は、Ennerdale Water 湖近くにあって、標高差 100m、たっぷり 8km 離れています。水平距離的には Buttermere の Gatesgarth駐車場 の方が近くて、3km 程度ですが……、こちらは標高差 320m の登りと 140m の下りの 峠を越えていかなくてはいけないので、時間や体力的には、必ずしも近いわけ ではありません。

Ennerdale Water 湖からの道は、林道または登山道が使えます。 地図を見るにごくなだらかな径のようです。 林道は、ブラック・セイルの管理人のためのものですが、 (オフロード)自転車ならここを走ることはできますから、実質上、 それが最速のアクセスになります — せっかく人里離れた ユースホステルに敢えて速く着きたいと思うのならば、ですが。

そして、ブラック・セイルは、Liza川に沿ったエナデイル(Ennerdale 谷)の中にあるため、 文字通り、辺りには全く人の気配を感じさせるものがなく、 ブラック・セイルからの眺めは、英国には珍しく、自然に囲まれたものになって います。特に、Ennerdale 谷は、(イングランドには珍しく)ちょっとした 森林になっているので、ブラック・セイルからは森林を眼下に眺め下ろす 風景になります。

ブラック・セイルに一度に泊まれる人数はごく限られます(12人??)。 人気のあるホステルなので、早めに予約を入れておくのが無難です。 一応、立地の条件上、当日、門を叩いた人を断ることはしないそうですが (日本の山小屋のようなもの)、当日客には、多分ベッドなんてないだろう、 と予想します。先方の準備の都合もありますから、緊急事態以外、 事前に予約しておくことを強くお薦めします。

ブラック・セイルの管理人は、朝食後、ホステルを閉めて町に戻り、 夕方に帰ってくるのが普通だと聞きます。つまり、ホステルに早く着いても、 多分、閉まっていて中には入れませんので、要注意(当然、トイレも使えないし、 雨宿りさえ無理そうでした)。

一度はこの伝説のブラック・セイル・ユースホステルに泊まって みたいものですね!


湖水地方の観光

ストーン・サークル (北方山地)

北方山地近くの平野の一角に、Stone Circle (ストーン・サークル) がある(GR291236)。

羊が放牧されている(いいのか?!)土地の真ん中に、直径 50m くらいで石が 円形に配置されている。一箇所だけ、石が集中的に配置されていて、何らかの 宗教的儀式に使われたのだろう、ということだ。誰でも自由に入れるし、 石に触ることさえできる。実際、僕が訪ねた時、10人あまり人がぶらついていた。 いいのか?!

控え目な看板によれば、紀元前2500年から1000年くらいと推測されているそうだ。 場所としては、開けていて、周りの山々が一望できる眺めのいい平地だ。 逆に言えば、人の背丈よりも高いこの重い石の数々を、遠い山からえっちらおっちら 運んできたというわけだ。現代の僕らには窺い知れぬそれだけの動機があったの だろうか。
(2005年12月の登山記録より)


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